残業ゼロ・人間関係良好でも辞める若手たち。「ゆるブラック企業」に居続けるという最大のキャリアリスク
キャリア戦略

残業ゼロ・人間関係良好でも辞める若手たち。「ゆるブラック企業」に居続けるという最大のキャリアリスク

仕事の攻略本 編集部
キャリア戦略・転職リサーチ担当

毎日ほぼ定時で帰れる。 上司は優しく、ハラスメントなんて無縁。 有給休暇も取り放題で、人間関係のストレスもない。

一昔前なら「最高のホワイト企業」としてもてはやされたであろう職場から、いま20代〜30代の若手社員が次々と退職していくという奇妙な現象が起きています。

彼らが逃げ出しているのは、過酷な労働を強いる「ブラック企業」ではありません。居心地は良いものの、仕事を通じた成長実感やスキルアップの機会が全く得られない「ゆるブラック企業」と呼ばれる職場です。

なぜ若手たちは、恵まれた環境を自ら手放し、あえて厳しい環境へ飛び込んでいくのでしょうか。そこには、現代のビジネスパーソンが抱える「会社依存への強烈な恐怖」があります。

なぜ「ゆるブラック」は若手の精神を削るのか?

若手が企業選びにおいて「成長環境」をどれほど重視しているかご存知でしょうか。大手就職情報サイトの直近の調査データによれば、就活生や若手社員の9割以上が「入社後、自身が成長できる環境かどうか」を最も重要な指標の一つとして挙げています。(出典:マイナビ・リクルート等各社調査)

一方で、企業側には「過保護リスク」が蔓延しています。 コンプライアンス遵守やパワハラ防止が叫ばれるあまり、上司が若手に対して難易度の高い仕事(いわゆるタフアサインメント)を任せられず、厳しいフィードバックもできなくなっています。結果として、若手には責任の伴わない単調な定型業務ばかりが割り当てられ、「やりがいの搾取」にも似た状況が生まれているのです。

加えて、大企業でさえ40代・50代を対象とした早期退職募集が当たり前のように行われるニュースを日々目にしている若手は、「終身雇用」という言葉をとっくに信じていません。

もし明日、今の会社が倒産したり、リストラされたりしたらどうなるか。 ゆるブラック企業で「誰でもできる単純作業」だけをこなしてきた人間は、会社の看板がなくなった瞬間、他社で全く通用しない「茹でガエル」になってしまう。この強烈な危機感こそが、彼らが退職届を出す最大の理由です。

「働きやすさ」と「働きがい」の残酷なトレードオフ

ここで勘違いしてはいけないのは、「だったら昔のように、残業まみれで厳しく鍛え上げるブラック企業に戻せばいい」ということでは決してない点です。

若手が求めているのは、「心理的安全性」が確保された土台の上で、自分の現在の能力を少し超えるような「適度なストレッチ体験」ができる環境です。失敗しても挑戦を許容してくれる組織風土と、市場価値を高めてくれる実践的なスキルの獲得がセットになって初めて、若手は定着します。

「働きやすさ(労働条件の良さ)」は大切ですが、それだけでは社員をつなぎ止めることはできません。「働きがい(成長実感と貢献実感)」が伴ってこそ、キャリアのモチベーションは維持されるのです。

沈みゆく船から脱出するための「次の一手」

もしあなたが今、「ここはゆるブラックかもしれない」と焦りを感じているなら、慌てて明日会社を辞める必要はありません。まずは今の環境を利用して、社外で通用する「スキル資本」を蓄積することから始めてください。

残業がないのであれば、その時間を副業やリスキリング(学び直し)にフルコミットするのです。

例えば、初期投資が少なく需要が高い領域として、動画編集者 / 映像クリエイターの副業からスモールステップで始めるのも有効です。単なる作業者で終わらずにディレクションやマーケティングまで学べば、独立も視野に入る強力なポータブルスキルとなります。

また、生成AIの台頭により「単純なデータ処理」の価値が暴落していくこれからの時代においては、AIには絶対に代替できない高度な対人折衝や感情労働の専門性を身につけることも強力な生存戦略です。 近年注目されている公認心理師障害者就労支援士といった、人と深く向き合う国家資格・専門職への越境転職は、まさに「市場価値を高める」ための王道ルートの一つと言えるでしょう。

会社はあなたの「定年」を保証してくれない

「今の職場は楽だから」という理由だけで、ぬるま湯の心地よさに甘んじている時間は、あなたの貴重な20代・30代の成長機会を確実に奪っています。

会社はあなたの定年までのキャリアを保証してはくれません。 自分の身を守れるのは、自分自身に蓄積された「スキル」と「実績」だけです。現状に漠然とした焦りを感じているのなら、手遅れになる前に、市場価値をシビアに見つめ直し「自律的なキャリア形成」へと今すぐ舵を切りましょう。